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『音楽室の鏡から』編集後記

 

8月1日0時、なるらんどさん企画「ワンテーマボイスドラマ」のテーマ【ホラー】参加作品『音楽室の鏡から』をUPさせていただきました。

ここではその背景というか、裏話をお話しようと思います。

 

※作品のネタバレを大いに含みますので、必ず作品を聞いていただいてから読んで下さい。ちなみにめちゃくちゃ長文です。

 

 

この企画はボイスドラマ企画者のなるらんどさんが「ボイスドラマ企画者さんが同じテーマでボイスドラマ作ったらおもしろそう・・・」と呟いたツイートにこひらが「えっめっちゃおもしろそうじゃないすかやりましょうよ」ってけしかけて(?)、なるらんどさんが企画してくれました。

 

●脚本について

テーマがホラーと言うことで、私はホラーものを書くのが初めてだったので緊張したんですが、ワクワクの方が大きかったです。

いざ書くとなった時思ったのは、「何が怖いかなんて人によって違うし、せっかく作るんなら私が怖いと思うものにしよう」「キャストさんの演技や声を生かした演出が何かできないかな」ということでした。

 

思い出したのは、小学生ぐらいの時によく読んでいた、子ども向けの怖い話の本。

小学校の図書室にホラーもののコーナーがあり、私は一時期ハマってずっとそのコーナーの本ばかり借りている時期がありました。

色んな本を読みましたが、その中で今でも覚えている話があって。

それはエレベーターを題材にした怪談でした。

(以下うろ覚えですがあらすじです、めっちゃ頑張ってググってみたのですが結局出典がわかりませんでした。もし読んだことある方おられましたらぜひ情報を・・・!)

 

マンションに引っ越ししてきたAくんは、友達もいなくて寂しくて、ピンポンダッシュをしてエレベーターで他階に逃げる、といういたずらをよくしていました。

今日もそうやっていたずらしていると、エレベーターに、Bと名乗る男の子が。

「いたずらしちゃだめだよ」とBくんはAくんに注意しますが、聞き入れません。

その日は別れましたが、Aくんはなおもいたずらを繰り返していました。

するとBくんがまた現れ注意してくれますが、Aくんは聞きません。

Bくんは昔話を始めました。

昔同じように寂しくて、ピンポンダッシュをして逃げる遊びをしていた男の子がいたのだと。

でも途中でエレベーターが故障で停止できなくなり、最上階から1階までエレベーターが落ち、その落下の衝撃で男の子は亡くなったのだと。

Aくんはゾッとしてエレベーターを降りようとしましたが、なぜかエレベーターは止まっていました。

えっ?と思いBくんに話しかけようとすると、Bくんはどこにもいませんでした。

そして、エレベーターが急降下を始めたのです。

パニックになるAくんは叫びますが、誰も助けてくれません。

Aくんは覚悟しました。

 

・・・それから何時間経ったのでしょう。

エレベーターは降下を続けています。

電気版の文字も消えていますが、急降下している感覚だけはあるのです。

いつ最下階に叩きつけられるのか、それとも永遠に降り続けるのか。

 

Aくんの乗ったエレベーターは、今でも降り続けています。

Aくんは心の中で叫びました。

(誰か・・・助けて!僕を・・・僕を、このエレベーターからおろして!!)

 

 

 

 

こういうお話でした。

私はこのお話を読んだ後、しばらくの間一人でエレベーターに乗れませんでした。

家族と一緒に乗っても怖くて、(いやでも私別に悪いことしてないし、今は家族とだから大丈夫、何かあっても一人じゃないぞ)なんて物騒なことを考えたりしていました。

そして心に残ったのが、「閉じ込められる恐怖」「今でも続いているという恐怖」の2つでした。

何が怖いと感じるかはその人次第。

でも私はその頃読んだお話でこれを1番怖いと感じ、そのテイストを入れたいなと思いました。

 

加えてその頃読んだ本で「幽霊に同情したら取り憑かれる」って書いてあって、「えっこれ優しい人は取り憑かれちゃうよ・・・どうしよう・・・」と子ども心に心配してしまった経験がありまして。笑

主人公の麻由が幽霊に同情してしまうシーンはそこからきています。

 

またこのブログを読んで下さってる方はご存じの方も多いと思いますが、こひらは普段声劇企画JOKERSという企画を主催しており、『JOKERS』というボイスドラマを3年ほど作っています。

それはとある時代のとある国、結構昔のお話で、キャラクターをがっつり作り上げています。

その作品とはガラッと変えたい、なるべくリアルな作風にしたいと思い、「高校合唱部に所属する女の子が幽霊に出会う」話にしました。

はい、学校の怪談って定番ですよね!やっぱりホラーやるならやってみたい。

ちなみになぜ合唱部かというと、単純な話です。

こひらが中学・高校と合唱部所属だったからです。

脚本内の「ブストー」は作曲者の名前です。ハビエル・ブストー。

あと0時の合わせ鏡も定番ですよね。絶対危ないやつ。

この辺はホラーの定番を入れてみました。

 

 またもう一つやりたかった、キャストさんの演技や声を生かした演出。

これが後半の入れ替わりです。

このおかげで麻由役、幽霊役のお二方にはご苦労おかけしたと思いますが、次はそのキャストさん達のことについて書きます。

 

●キャストさんについて

脚本が出来上がった後、キャラのイメージを固めてお声かけさせていただきました。

お三方とも快諾して下さり、とてもホッとしたのを覚えています。

 

まず、主人公の麻由役に以前から交流のあった柚樹アサさん。

アサさんは少年声のイメージが強いんですが、女の子ボイスもとても自然で、麻由は元々合唱部のアルトという設定にしたかったのでお願いしました。

何より含みのある演技、黒い演技がとっても似合う方だなと思っていたので(褒めてます!褒めてますよ!!)、入れ替わりという特殊な演出がある今回の作品にはぴったりだなと。

実際録って頂いたボイスもとてもハマッていて、前半の先輩との自然なやりとり、幽霊に出会った時から仲良くなっていく演技、ラストの入れ替わり後、どれも大好きです。

個人的に好きな演技は(全部好きだけど)入れ替わり後の「うまくいった」と「顔も声も、その人なのに?」と「入れ替わる人を探してね。それじゃ」です。

表情の変化が見えるようで、最初に聞いてゾクゾクしました。

 

次に、幽霊役にユトギさん。

幽霊役、と考えた時に真っ先に浮かんだ方でした。

お声と演技を知っていたので、入れ替わり後の演技も含め、ユトギさんしかいないなぁと思っていました。

収録されたものを聞いてひゃあああ!と叫びました。

儚さ、かわいさ、ミステリアスさ、寂しさ、透明感、その他諸々、含んで欲しい要素が全部入っていて、ドンピシャにハマっていました。

入れ替わり後はガラリと変わって感情を出してくれて、こちらも素敵でした。

叫ぶところや、最後の「そうね、そう呼ばれてるわ」とか特に好きです。

 

最後に、先輩生徒役にはせべ倫世さん。

先輩と生徒どちらもお願いしたいと思っていたので、声幅が広くてお二人のお声と合いそうな方・・・というイメージでお声かけさせていただきました。

はせべさんもお声と演技は知っていたのですが、サンプルボイス聞くと本当に声幅の広さに驚きます。オンリーはせべさんで1本ボイスドラマ作れそう←

前半の先輩、最後の生徒、どちらもガラッと変えて演じて下さいました。

すごく聞きやすいお声なので、噂のことを麻由に言う台詞がぴったりでした。

リスナーさんを物語に引き込んで下さったのではないかと思います。

 

先にも書いた通り後半、麻由役と幽霊役の二人には入れ替わりというちょっと特殊な演技をお願いしました。

収録方法はまず前半部分を収録して頂き、その部分で私がOKを出し、お互いのボイスを交換して聞いてもらい、その上で後半部分を収録して下さいました。

収録方法について相談にのってくれたり意見を出してくれ、短期間で仕上げてくれたキャストの皆さんには本当に感謝しています。

ありがとうございました。

 

●編集について

 編集はいつも作ってるJOKERSと比べてキャラが少ないので、めちゃくちゃ早くできました。

うおぉお登場人物少ないだけでこんなに違うのか・・・ってちょっとびっくりしました。

 

工夫したのは音楽室、合唱部、リアル感がほしい、と思ってBGMをピアノものに統一した点と、幽霊さんのエフェクトです。

ちょっとこもってる、響いた感じにしたくてかけたんですが、ユトギさんの元のお声がめっちゃ綺麗なので「くぅう・・・エフェクトかけるのもったいない・・・でもかけた方が絶対いい・・・」と思いながらかけてました。笑

 

最後の生徒と幽霊のやりとり前には、時計のSEを入れて時間経過を表現しました。

脚本ではあのやりとりは「数年後」と書いています。

さぁ、果たして何年後のことなのでしょうか。

幽霊の中の麻由は無事、入れ替わることができるのでしょうか。

 

●最後に

今回素敵な企画に参加させてもらって、2作目の短編、初めてのホラーとあまり経験したことのない体験をさせてもらいました。

今後もなるらんどさんは別テーマで続けていってくれると思うので、スケジュールが許す限りこひらも参加していきたいと思っています(*^O^*)

企画のなるらんどさん、ご協力頂いたキャストさん方、聞いて下さったリスナーの皆さん、ありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。

 

 さて、最後に。

 

人は誰かを認識する時、何を以てその人と結論づけているんでしょう。

顔と声がその人でも、中にいるのが別の人で、喋り方やクセ、情報をコピーされていたとしたら、気づける人はどれだけいるんでしょう。

 

 

――あなたのとなりにいる人は、本当に「その人」ですか・・・?