短編ボイスドラマとして、『戦う介護士さん』というボイスドラマを制作しました。
ここではその編集後記を書いていきます。
※作品のネタバレを含みますので、作品を聞いていただいてから読んで下さい。
●脚本について
このお話は、私が働いている介護施設で、昨今はやっている例の感染症が広まってしまったことから生まれました。
一人、陽性の方が出た瞬間から、職場の空気はガラッと変わり、利用者さんへの介助などの対応が全て変わりました。
介助時はヘアキャップ・フェイスシールド、防護服であるガウンを着用。
(もちろんいつもしているマスクと手袋は継続)
その全てを一人の介助ごとに交換し、手洗いとアルコール消毒をする。
利用者さんの食器は全て使い捨ての紙皿などを利用し、今まで外部委託業者にお願いしていた残飯処理は全て施設側で行う。
陽性者の対応はなるべく限られた人間で行い、共倒れを防ぐ、など。
早めに気づいて対応したにも関わらず罹患者は増え、医療現場の逼迫により入院も難しい状態でした。
そして陽性者の対応を率先して申し出てくれていた先輩方が、次々と罹患し欠勤していきました。
その状況は、まさに『戦場』。
毎日毎日、この猛暑の中で、ビニール防護服の中で汗だくになりながら、そのストレスを吐き出すかのように書いたのがこのお話です。
ちなみにこのお話、舞台は介護施設ですが、定員や職員の配置のルールは全くもって無視しております。
なのでその辺はスルーしてください。
起こったことは大体私が体験したことですが、戦場っぽい台詞に仕上げています。
陽性者の対応を名乗り出る乾さんと、見送る加藤さんと合田さんの会話も、かっこよく書いてますが現場ではドライです。
私「陽性の人、あと○人ですね…」
A先輩「さて、オムツ交換の時間ね。私陽性の人全部回るから、後の人お願い」
私「大丈夫ですか?ずっと連勤ですよね先輩…」
A先輩「大丈夫大丈夫!んじゃ、頼むよ~」
次の日
B先輩「Aさん陽性で休みだって」
私「…!!」
こんなやりとりが、何回もありました。
私自身はあまり陽性者の対応をすることは無かったのですが、対応をしてくれていた先輩が次々と倒れていく状況は恐怖でした。
それでも、1番辛いのは、しんどいのは、罹患している利用者さん。
皆それぞれ、自分の仕事をしていました。
でも、介護施設の中のことって、あまり表に見えないんですよね。
なので、聞きやすいボイスドラマにしたらわかりやすいかも、と思って作ってみました。
●キャストさんについて
今回は乾さん役には書いている時からお願いしたかったKKさんにご依頼、その他4名の方は募集ツイートにご反応のあった方から選ばせて頂きました。
ちょっぴりおっちょこちょいな所もあるけど癒やされる、そしてかっこいい加藤さんを穂月さんに。
頼りがいのあるリーダー、乾さんをKKさんに。
ベテランの風格を漂わせるしっかり者の合田さんを里見さとみさんに。
最初に戦線離脱してしまったものの最後に帰還する秋山さんを角谷知樹さんに。
介助される利用者さん、篠原さんを是枝留さんにお願いしました。
今回は「介護施設の現状を戦場っぽく、かっこよく描く」をテーマにしていたのですが、皆さん本当にかっこよく演じて下さり、本当にありがたかったです。
演技だけ聞いていたら本当に軍人さんぽいというか、戦場で戦う戦士のように聞こえて、皆さんのイメージが合っていてよかったなと思いました。
乾さんが指示するシーンとか、加藤さんが決意を新たに介助に向かうシーンとか、合田さんが倒れるシーンとか、秋山さんが帰ってくるシーンとか。
そして篠原おばあちゃんだけは、ちょっとリアル感があって。
編集の話にもなりますが、あそこは「本当の戦場」というか、「本当に実際に戦ってるのは罹患している利用者さん」っていう表現がしたくて。
是枝さんのおばあちゃんの演技が元々とても好きなので、ご一緒できてよかったです。
演じて下さったキャストの皆さまに、本当に感謝しています。
●編集について
ちょっと大げさなぐらいのBGMをつける、というのが今回のイメージでした。
なのでオーケストラメインの、ちょっとRPGにもありそうな、ちょっと派手めな演出をしています。
演者の皆さんの演技に、ぴったり合ったと思っています。
ちなみにSEでこだわった1つは「防護服の音」。
もうねーこの防護服(ガウン)、大嫌いでした。
ビニールか不織布でできてて、長袖で、膝下ぐらいまで全身覆えるようになってるんですけど。
めちゃくちゃ暑いんですよ!いや感染防止には絶対必須なんですけど!!
あのガウンを脱ぐ時のパリパリ…っていう独特の音を入れたくて、ビニール袋を触る時の音を入れています。
もう一つは「紙オムツのテープをはがす音」。
これは入れなくてもよかったと思うんですが、排泄介助のシーンのリアル感がちょっと出るかなと思って入れています。
マスキングテープをはがす音、というのが見つかったので、そちらを使用させて頂いています。
●最後に
例の感染症は、まだまだ猛威を振るっているようです。
介護施設よりも前戦で戦って下さっている医療現場の方々に、生活の全てを支えて下さっているエッセンシャルワーカーの方々に、社会のどこかで今日も働く皆さんに、娯楽を、趣味を支えて下さっている全ての皆さんに感謝しつつ。
皆さまと、皆さまに関わる全ての方が元気でいられますように。
長文読んで下さりありがとうございました。