12月17日0時、なるらんどさん企画「ワンテーマボイスドラマ」のテーマ【終わり】参加作品『下り坂を歩く』をUPさせていただきました。
ここではその背景というか、裏話を書いていこうと思います。
※作品のネタバレを含みますので、作品を聞いていただいてから読んで下さい。
●脚本について
今回のテーマが『終わり』ということで、私の作品の方向性はすんなり決まりました。「人生の終わり」です。
せっかくなら自分ならではの「終わり」を書きたいけど何だろう?と思った時、やはり私の強みは「介護に携わっている」ことだと思って。
そうしてこの脚本を書きましたが、実はこれは介護職として働いた中でのエピソードではありません。
数年前に他界した祖父を、祖母がずっと介護していた様子を見ていたことから生まれました。
「焼酎の梅酒割り」は実際に、お酒を止めろと言われた祖父がやっていたことです。それはあかんやろ、じぃちゃん。
もちろん私も介護職として、祖父に介護認定を受けるよう勧めたり、デイサービスに行くよう説得したり、車の免許を返納するよう説得したり、母や祖母と共に色々なことをしました。
でも1番大変なのは、24時間一緒にいる祖母です。
それでも、愚痴はこぼしても弱音は一切吐かない人でした。
祖父と祖母の年齢は共に80を超えており、「老老介護」でした。
※老老介護とは、介護をする側と介護を受ける側のどちらもが高齢者である状況のことで、介護疲れによって介護する側も倒れてしまう「共倒れ」となるリスクが高く、近年社会問題となっています。
私たち家族もサポートをし、介護サービスの力も借りつつ、数年前、祖父は他界しました。
この時ちょうど私が住む大阪はコロナ禍真っ最中。
愛媛に帰省できず、通夜にも葬式にも行けず、結果として今年の夏にようやく祖父のお墓参りに帰省することができました。
仏壇に手を合わせて、遺影を眺めて、「じぃちゃん、やっと帰ってこれたわい。遅なってごめんよ」と心の中で呟いて。
遺影の中の祖父は、綺麗な顔をしていました。
祖母はとっても元気で、いつものマシンガントークでおしゃべりして。
つい最近生まれたひ孫の写真に囲まれて、嬉しそうにしていて。
私は祖父が亡くなった時、側にいられなかったけど、祖母は大丈夫だったんだろうか。
今は元気そうだけど、当時はやっぱり色々あったんじゃないのかな。
そんなことを思ったのが、今回の脚本に入っています。
そしてもう一つ、タイトルに入れた「下り坂を歩く」という言葉。
脚本にも書きましたが、私は高齢者介護に携わる人間は全員、「人生の下り坂をゆっくり歩いて行くための杖」だと思っています。
年をとってきた、膝が痛い、足が痛い。家の階段が辛い。
それなら手すりをつけましょう。介護保険が使えます。
1人でお風呂に入るのが怖い、滑ったらどうしよう、掃除もしにくくなってきた。
それなら入浴介助サービスを使いましょう。
1人で出来ることが減ってきた、介護サービスを使いたいけどよくわからない。
それならまず、介護認定を受けましょう。
少しでも多くの人が、最期まで生き生きと暮らせますように。
実はこの「杖」の考え方、本当は介護施設ものの長編ボイスドラマに入れようと思っていたんですが、今回のテーマにぴったりだなと思ったので先に入れました。
今後同じようなセリフが入るかもしれませんが、ご容赦を。
●キャストさんについて
キャストさんは募集ツイートへのご反応があった方から選ばせていただきました。
ケアマネージャー谷口恵さん役に結内狼さん。
AKITOLET様の秋M3作品『My Oblivious』でお声と演技を浴びた後だったので、ご収録後のセリフを聞きながら語彙力の無い呻きを漏らしてしまいました。
本当にあたたかく自然なお声と演技で、利用者さんに寄り添って働いていらっしゃる普段の様子が見えるかのようでした。
そしておばあちゃん、藤山弘子さん役に柘榴石さん。
ボイスサンプルをお聞きしてそのお声幅の広さに宇宙猫状態になってしまったのですが、今回お願いしたかったおばあちゃんにぴったりのお声だと思いお声かけさせて頂きました。
芯があってしっかりしていて上品で、ご主人を絶対に最期まで看取ろうと頑張っていた方、というイメージです。
初めてご一緒させていただきましたが、本当に素敵な縁に恵まれました。
本当にありがとうございました。
●編集について
今回!編集!!ほとんどしてません!!
キャストのお二人の演技をそのまま聞いて頂きたいと思ったので、ほんっとに最低限の効果音とBGMしか入れてません。
気を遣ったのはBGMを入れるタイミングと、ラストにあおるタイミングぐらいです。
他、何もしてません。
お二人のお芝居をじっくり味わって頂けると思います。
●最後に
どんどん参加者様が増えていく「ワンテーマボイスドラマ」、今回も参加させて頂きありがとうございました。
あと残り2回も楽しんでいこうと思います。