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虚空旅団『フローレンスの庭』観賞

 

※作品のネタバレを含みます。観劇後のお客様・関係者の方のみお読み下さい。

私の経験なんかも自由に書いてます、すみません。

 

虚空旅団さんの公演『フローレンスの庭』を鑑賞してきました。

学生劇団時代の後輩、土肥希理子さんがヒトミ役として出演されるということで。

アイホールでの観劇が初めてだったのですが、周りに飲食店が多くて結構テンションが上がりました!何て素敵な立地!!

夫とカレーをおいしく食べて入場しました。

 

2時間15分という長めの上演時間でしたが、もうあっという間でした。

看護専門学校と実習先の病院の間にある小さな庭を舞台にした群像劇。

観る前から土肥さんに「先輩には刺さると思います」と言われていたのですが、いやーーーーー刺さりました。刺さりまくりました。大好きです。

少し私事になりますが、私は現在介護職として働いており、最初の3年は特養、特別養護老人ホームで働いていました。

最初の1年ほどは研修として併設の病院や老健、デイサービスを転々とし、その時に色んな看護師さんにお会いして。

その時のことや、自分が介護として携わってきたこと、色んなことを思い出しました。

 

まず登場人物の皆さんがほんっとにリアルで!

いたぞ…いたぞこういう人ー!みたいな感じで本当に素敵でした。

学生さん達はもちろん、特に先生や病棟の方達が!!

かっこよくて頼もしくて、でも怖くて!

舞台上に出てくるだけで空気が変わる感じが好きでした。

 

人物のそれぞれの関係性や、物語の中で変化していく様子もとても繊細で丁寧で、うんうんと頷きながら、時々泣きながら観てました。

ユウコさんとミキさんのエピソードは、胸が痛くなりながら見て。

「わかってても許されないことは、無理に許さなくていい」っていう台詞がすごく好きで、すごく温かくて、胸に響きました。

ミキさんとサナエさんのエピソードも、苦しいよなぁって思って見て。

最後にヒトミちゃんと笑えてたのがホッとしました。

あそこであの場にいられるのはヒトミちゃんだよなぁなんて思ってました。

 

アイさんのエピソードで「辞める人と辞めない人の違い」みたいな所もわかるなぁと思いました。

「血液」「便」「尿」…そして「死」。

そういうのに慣れないとやっていけない世界だよなぁと。

福祉の資格を取得した友達の中には、実習先で「死」に直面したことで、「人が亡くなるのを見なくていい現場に行く」と就職先を決めた人もいました。

自分も研修中は、急変時はびっくりしてワタワタしていたけど、今では「いやもう●●さん下剤いってたからシーツまでドロドロ」なんて言いながら先輩と昼食食べてたりして。

でもそれは本当に個人の感覚で、本当に無理な人もいるから、そこは適材適所だよなぁなんてぼんやり思ったり。

 

ナツキさんの担当患者さんが亡くなったエピソード。

脚本の流れが自然過ぎて、好きだなぁと思いました。

塩分摂取量の話はわかりすぎて、本当に涙が止まりませんでした。

特養で働いていた時、糖尿病をお持ちの入居者さんの差し入れに、甘い物が差し入れられた時、お断りさせていただくことが多々あって。

ご本人もご高齢で、甘い物食べたいって言ってて、でも許されなくて。

誰のためにお断りしてるんだろうっていつも思ってました

 

災害時のエピソードももの凄く好きでした。

これだけ広い舞台で役者の方がたくさんいるからこそ、すごく生きるエピソードだなぁと。

事故を起こしてしまったナガサワさんが言いたいことをはっきり言っていた所も、指示を出すワタナベ先生も、安置所に行くよ!て代わるヒトミちゃんもかっこよすぎました。

阪神淡路大震災の話が出たところも好きで。

確かこの震災の時に、「命の選別」トリアージが注目されたんですよね。

その中を生きていたノグチ先生は本当に、想像を絶する経験をされただろうなと。

当時の情景が浮かぶようなエピソードでした。

 

チサトさんのエピソードはもう号泣でした。

「何で私今看護師じゃないんだろう」「普通に朝起きることって当たり前じゃない」、刺さる台詞のオンパレードでずっと泣いてました。

エンゼルケアの所も。

奥様と娘さんにエンゼルケアしてもらえるなんて、本当にお父様はお幸せだったと思います。

 

そして最初と最後に、現在のコロナ禍の表現もあって。

見覚えのある防護服に専門用語が飛び交っていて、自分の職場で2回クラスターが出たことを思い出しました。

私の働いている介護施設では、発症確認後は医療機関と連携をとり、その指示に従い、必要に応じて入院措置をとってもらう対応をとっていました。

どんどん容態が悪くなっていく入居者さん、入院させたくても病床が空いていない病院、見かねて「病状多少盛って報告したれ、入院やないとここじゃ無理や!」と電話に向かう主任、率先して陽性者の介護にあたるも次々と罹患して戦場を離脱していく先輩方。

大変な状況の病院を表現した演出は本当にリアルで、「あの時はご迷惑をおかけしました…」と言いたくなりました。

 

 

長々と書きましたが、本当に素敵なお芝居で、配信版も絶対に見ようと思っています。

というかDVDが欲しいです。脚本も欲しいです。

できれば数年ごとに再演してほしいです。それくらい好きです。

作り上げた皆さまに万雷の拍手を。

人生で忘れられないお芝居になりそうです。

本当にありがとうございました。