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『夜の王国』編集後記

4月21日0時、なるらんどさん企画「ワンテーマボイスドラマ」のテーマ【あなたがボイスドラマを通して伝えたいこと】参加作品『夜の王国』をUPさせていただきました。

 

ここではその背景というか、裏話を書いていこうと思います。

 

※作品のネタバレを含みますので、作品を聞いていただいてから読んで下さい。

 

●脚本について

最後のワンテーマボイスドラマということで、気合いの入ったテーマと「時間無制限」になるさんの思いを感じつつ、書きたいことを考えました。

入れたのは「ボイスドラマでしか表現できないこと」と「伝えたいこと」。

伝えたいことは色々ありますが、「みんな何かしら抱えて生きている」ってのが浮かんで、それを伝えたいと思った時、「ボイスドラマならではの表現」として通話会という表現が思い浮かびました。

みんな声だけで繋がっている、オンラインだけで繋がっている。

でも部屋の様子はわからない、どんな体勢で、どんな環境で喋っているかはわからない。

その様子が最後にわかる、という表現にしてみました。

 

ボイスドラマ企画やってると本当に出会いって一期一会だなと思って。

それぞれみんなリアルがあって、プライベートがあって、その合間を縫って活動している。聞いて下さっている。

少し時期が違えば、出会えていない人もいる。

本当に奇跡のような確率で、企画は成り立っています。

関わって下さった方、聞いて下さっている方への感謝もこの作品には込めています。

 

劇中劇『夜の王国』キャラのテーマとしては、

グアン「朝が来るのかわからない」

キアラ「朝は来ないと知っている」

アリア「朝は来なくていい」

という所から「朝は来ると信じている」に変化する、というものです。

ちなみに名前の由来はグアンが中国語の「光」、キアラがラテン語の「輝く」、アリアが「夜の女王のアリア」でした。

 

トバリさん(本名俊夫)はガン患者という設定です。

本人の思いは「朝は来ると信じている」。

先は分からないけれど、抗がん剤を飲み、手術をすることで、寛解を信じています。

名前の由来は「夜の帳(とばり)」から。

 

水無月仁哉くん(本名仁志)はヤングケアラーという設定です。

本人の思いは「朝が来るのかわからない」。

家族も自分もいっぱいいっぱいで、状況が改善するのかわからないと思っています。

名前の由来は「一夜(いちや/ひとよ)」から。

 

柊さよちゃん(本名紗綾)はALS(筋萎縮性側索硬化症)患者という設定です。

本人の思いは「朝は来ないと知っている」。

根本的な治療法は見つかっておらず、病と共に、少しでも自分らしく生きようとしています。

名前の由来は「小夜(さよ)」から。

 

弥生さん(本名葵)は不妊治療をしている設定です。

本人の思いは「朝は来なくていい」と思っていた、です。

過去に子どもを授かるも流産してしまい、それを乗り越えまた治療を続けています。

名前の由来は「宵(よい)」から。

 

最後の紗綾も言っていますが、発表した作品はネットの海を泳ぎ続けます。

たとえキャストの誰かが活動を停止しようと、企画者が創作を引退しようと、発表した作品は残り続けます。

そこにはその瞬間を生きた証が残されています。

そうしてネットの海を泳ぎ続け、いつかまた誰かの耳に届き、何かを感じてくれたらいいなと思います。

 

こんなことを盛り込みつつ脚本を書きました。

 

●キャストさんについて

 キャストさんは募集ツイートへのご反応があった方から選ばせていただきました。

 

企画者のトバリ役にティオンヌマンさん。

通話会のみの参加ですが、めちゃくちゃ自然な感じで演じて下さってて大満足でした。最後の良平とのシーンもすごく自然で、常にフラットな感じでイメージにぴったりでした。

ティオさんとはラジオとかで普通にお話させてもらったことがあって、その時に「この方普通に喋ってても本当にいい声だな~」と思ったこともトバリさん役をお願いした理由の1つだったりします。

 

グアン役を演じる水無月仁哉役に折原幸平さん。

魔女に挑む勇者グアン役、人なつっこくてちょっとおふざけもする仁哉役、ギャップがあってとても素敵でした。

余談。「ちなみに大」の台詞ですが、正規台詞と共に「ちなみに…う○こだ(キリッ」と低音イケボで言ったバージョンが送られており、こひらは大爆笑したのでした。編集中の癒しでした。

 

キアラ役を演じる柊さよ役に巫部えるさん。

グアンと共に戦うクールなキアラ役、素直でかわいらしいさよ役、これまたギャップがいい。

1つの作品でギャップをこんなに味わえるなんて贅沢な作品だ…と自分で自画自賛しつつ音声聞いてました。

さよちゃんに関しては「体調のしんどさ」を「作品が進んでいくにつれて夜が更けていく→朝になる、眠い」に思わせられたらいいかなと思っていました。

ラストの心情吐露もですが、繊細に感情を乗せて下さって感謝です。

 

ラスボス、魔女(女王)アリアを演じる弥生役に穂月さん。

辛い過去を抱え朝を拒んだアリア役、お茶目なお姉さん弥生役、どちらもよかったですよね…。

グアンとのバトルシーン、やられからの回復、高笑いというのは一度書いてみたくて書いたら穂月さんから渾身の音声が届き震えました。

通話会の自然な感じ、ラストの健人との背景が見えるような演技も素敵でした。

 

ここからはネタバレ満載、重要な4人です。

トバリさん、本名俊夫の同居人、良平役にKAZUMAさん。

俊夫と良平は恋人同士です。

何年も一緒にいるんだろうなという自然な距離感が心地よかったです。

 

弥生さん、本名葵の夫、健人役にKKさん。

葵さんより結構年上のイメージでした。

「うん」一言だけでも、葵さんを包み込むような優しい演技でした。

 

仁哉役、本名仁志の祖母、文代役に容子さん。

認知症を患っていて、常に夢見心地です。

そのイメージを持ちつつ、かわいらしげもあるおばあちゃんでした。

 

さよ役、本名紗綾役のヘルパー、橋本役に柘榴石さん。

紗綾とは長年の付き合いで、しっかり介助してくれます。

しっかりして、それでいて優しいヘルパーさんを演じて下さいました。

 

そしてリスナーの4人組。

リスナーさんのシーンを入れたのは三谷幸喜さんの映画『ラヂオの時間』で、トラックの運転手さんがラジオを聞いているシーンがすごく効果的だったからでした。

この4人のシーンは特にSEを細かめに入れています。

 

仕事帰りの男性役にたくみさん。

現代サラリーマンっぽさがリアルで「わかるぅ…」となりました。

2パターン頂いたので悩みながら選びました。

 

学校に行きたくない学生役にやちかさん。

布団に潜っている、気怠い感じがすごく好きでした。

何となく「夜」が似合うお声だなと思ったりしてました。

 

眠気と戦いながら赤ちゃんをみる女性役に藤森まいさん。

冒頭の揺らす時の声はまいさんのアドリブです。

とてもよかったのでSE盛り盛りにしたらよりリアルさが増して楽しかったです。

 

長距離トラックの運転手役に井之上賢さん。

「こういう運転手さんいそうー!お疲れ様ですー!」という感じのリアルさ。

SEと合わせたらめっちゃ運転手さんで、編集楽しくやってました。

 

最後のワンテーマボイスドラマに、素敵なキャストさんとご一緒できて嬉しかったです。

今回だけでなく、ワンテーマボイスドラマでは本当にたくさんのキャストさんとご一緒させて頂きました。

今まで短編を作ることがあまりなかったのですが、短編を作ったことで「いつかご一緒したいな」と思っていた方にお声をかけさせてもらったり、新しい出会いが増えました。

この場を借りて、お礼申し上げます。

 

●編集について

 いやーーーー楽しかったですね編集。

BGMは劇中劇の中がメイン、通話会やリスナーさん達のシーンには入れず、現実世界では最後のさよちゃんのシーンのみに入れました。

大好きなPeriTuneさんの曲をたくさん使わせて頂きました…満足…。

 

SEは現実世界でも劇中劇でも、結構細かめに入れてみました!

何となく考えていたSEの演出でも、キャストさんの演技によって結構違うのでそこが楽しいところです。

今回だと劇中劇戦闘シーン、グアンの「はぁあああっ!」とアリアの「ぐああぁあああ!」はどんなSE入れるかあまり考えずに書いちゃったのですが、お二人の演技が渾身で「この演技に合うようにSEを盛らねば…!」と思い、めっちゃバリバリ雷攻撃してもらいました。

個人的にその後の回復エフェクトSEとグアン、キアラの焦りっぷり、回復したアリアのコツコツハイヒールSEからの高笑いコンボは大のお気に入りです。

ここの編集はとっても時間がかかったのですが、その分いい感じになったと思ってます。

 

●最後に

なるらんどさんが「こういうのやってみたら面白そう」とワンテーマボイスドラマに繋がるツイートをしてもうすぐ2年。

最初は数作品だった参加作品は、回を追うごとに増えていき、最初は「全部聞くぞ~!」と意気込んでいた私も全部は到底終えないほどの数になっています。

この企画をきっかけに企画者デビューした方、キャストデビューした方もいらっしゃると思います。

私自身にとってもワンテーマボイスドラマはとても思い出深いものとなりました。

長編をメインにしていた私にとっては短編自体が挑戦で。

それでも書いてみようとやってみたら、短い分数の中で、最低限の台詞で、表現したいものを表現するという、短編の魅力にハマってしまいました。

個人的にやってみたかったので、参加作品は全て7分以内に収めています(入らなかったものはプロローグにするという荒技も使ってますが 笑)。

この企画で短編をたくさん作ったので、これから先忙しくなって創作が難しくなっても、短編は半年に1回とか1年に1回とかでもいいから続けられたらいいなと思っています。どうなるかわかりませんが。

 

 

こひらのワンテーマボイスドラマにご参加下さったキャストの皆さま、聞いて下さったリスナーの皆さま、ありがとうございました。

そして素敵な企画を作って下さり、毎度テーマを考えて下さったなるらんどさん、本当にありがとうございました。

いつか復活した時に参加できそうなら、ぜひ参加したいです。

 

本当にありがとうございました!

ワンテーマボイスドラマ、どなた様の作品も素敵なものがいっぱいですので、今後とも何度でも聞いて下さいね。