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『加賀見山旧錦絵』編集後記~③編集編~

 

素敵なキャストの方々のボイスを頂き、いよいよ音声編集に取りかかりました。

ここでは音声編集・動画編集時のこだわりについて書きます。

 

●音声編集について

①台詞組み

私は音声を編集するとき、台詞だけをまずつなげて1つのファイルにし、それにBGMとSEを付けていく、という方法をとっています。

まずは台詞を組みながら、台詞に加工が必要な所には加工を施していくのですが、特に楽しかった加工を紹介します。

 

・前編での岩藤・お雪・お琴の登場シーン。台詞の音量を上下させ、さらに左右のバランスも変化させました。お初・お梅・おみつがギクッとしている側を、優雅に3人が通っていく様子をイメージできればなと思っていました。

 

・後編でお初と尾上様がそれぞれ別の部屋で、お初は薬を煎じ、尾上様が遺書を書くシーン。ここは元々の文楽の舞台で下手(しもて:舞台左)と上手(かみて:舞台右)の部屋に二人が分かれ、観客にはお初と尾上様の様子が同時に見えるようになっています。私は観劇しながら「お初ちゃん、横、横~!横の部屋であなたの主人、遺書書いてる~!はよ戻って~!」とハラハラしていました・・・。

その気持ちをボイスドラマでも味わってほしいと思い、お初と尾上様、それぞれの台詞の音声を左右に分けてみました。

その後に待ち受ける、二人の永遠の別れを暗示させるような、切ないシーンになったと思います。

 

②SE(効果音)

SEについてですが、今回は作品の舞台上、今までのボイスドラマでお借りしてストックしていた効果音があまり使えず、1から集める作業が必要でした。

そしてこれは毎度のことですが、私が脚本を書く時って、「この効果音を作ってらっしゃる方いるかな?」なんてことはまず考えないんですね。

考えずに脚本を書くので、後から「あー!こんな効果音無いってー!こんな脚本書いたの誰やねん!私やわ!!」と自分で自分にツッコミを入れる羽目になります。

今回も色々苦労をしましたが、何とか満足のいくSEが入れられたと思っています。

いつもつけている足音のSEも、舞台が武家屋敷、しかも履いているのは足袋、更に女中達はほとんど足音をたてずに歩く、という条件。

小さめに、すり足に聞こえるような効果音を入れています。

 

困ったのは最後の殺陣シーン、岩藤が傘を開く所ですが、もちろん傘は和傘です。

和傘を開くなんてピンポイントなSEがなかなか見つからず、結局普通のジャンプ傘のSEに、新聞紙を開く時の紙が擦れる音を被せ、それっぽく聞かせています。

でも殺陣シーンの編集はとても楽しく、刀の効果音ってやっぱりいいなぁ、とニマニマしていました。

鞘から刀を抜く音、構える音、いやー、好きですね。

殺陣シーンがあるボイスドラマを編集してると自然にお借りする効果音のストックが増えていく。元々フォルダを武器>ナイフ・刀/銃/体術/鈍器っていう風に分けてるんだけど、今回で刀の効果音が増えて更に武器庫みたいになってきた。
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効果音フォルダを武器>ナイフ・刀/銃/体術/鈍器っていう風に分けてるのですが、今回で刀の効果音が増え、更に武器庫のような状態になってきました。

 

(とっても余談ですが、刀の効果音をDLして増やす作業がマトリックスとかゲームみたいで楽しかったです。日本刀の使い方をマスターした!みたいな。)

 

時代に即した音を使用できたのも、フリー効果音を公開されている効果音サイト様のおかげです。いつも本当にお世話になっており、感謝しかありません。

 

②BGM

次にBGMについて。

元々和風ボイスドラマはいつか絶対に作りたいと思っていたので、ボイスドラマを作り始めた頃から好みの和風BGMがあればDLし、「いつか使いたい和風」フォルダにストックしていました。

今回はそのフォルダが火を噴いたというわけです。

いやーめちゃくちゃ楽しかったですね、BGM編集。

なるべく和楽器メインのBGMで、入ってもピアノぐらいのBGMがいいなと思って選んでいきました。

 

主に尾上様とお初が話すシーンで流れる琴メインのBGMは、私の中で「尾上様テーマ曲」と呼んでいて、すごく気に入っています。

他にも後編で尾上様が自害された後、お初の絶叫と共に流れるBGMもお気に入りです。あれは元々企画を立ち上げた当時から、絶対にあのシーンで流したいと思っていたので、イメージ通りに入れることが出来てよかったです。

 

もう一つは殺陣シーンの所で流れるBGM、もうめちゃくちゃかっこいいですよね。

メインのメロディが流れる部分も好きですし、途中で三味線メインになる所も大好きで、テンション爆上がりでずっと編集していました。

 

ラストの重々しいBGMも好きですね、キャストさんが決まった時に告知動画で使ったものと同じです。

この曲は絶対、1番最後のサビ始まりで語り手さんの「お初はありがた涙・・・」の語りを入れたい!と思ったので、そこを基準に前のシーンの安田庄司殿やお初の台詞の間を調整しました。

 

和風ボイスドラマで使いたかったBGMをいくつも使えて幸せでしたが、実はまだ「これ使いたかった・・・」というBGMがあります。

それはまたいつか、和風ボイスドラマを作って、その時に使用させて頂こうと思います。

 

素晴らしいフリーBGMを公開してくださっている作曲者様方に、感謝申し上げます。

 

●動画編集について

音声が出来上がれば、次に動画編集です。

最初は背景を固定のまま流そうと思っていたのですが、せっかく古典浄瑠璃ものなのだし、少しでも雰囲気を味わってもらいたいと想い、数枚背景をお借りすることにしました。

草履打ちの段の最初は昼間だった空が、段々と夕焼けになっているところはちょっとこだわりです。

ついでに尾上様が自害された所と、岩藤がお初に討たれる所、2箇所に血しぶきのエフェクトを追加しています。

また語り手さんの語りの部分は、わかりやすく、更に原文の美しさを味わってもらえればなと思って字幕を入れました。

ここの語りは全部の意味をわかってもらおうと入れている訳ではありません。

雰囲気です、雰囲気!何となくわかればいいのです!笑

そして前編最初と後編最後には、コノハ様が描いて下さったイラストを入れました。

個人的に、後編最後にこのイラストを出すタイミングがうまいこといったなと思っています。

BGMのメロディラインに合わせて色々加工するのが好きなんですよね・・・。

楽しく動画も編集できました。

 

 

こうして、古典浄瑠璃ボイスドラマ『加賀見山旧錦絵』は完成しました。

このボイスドラマを聞いた方が、少しでも古典や、人形浄瑠璃・文楽に興味を持ってくださると嬉しいなと思っております。

もちろん、今すぐ2月に東京で行われる文楽公演『加賀見山旧錦絵』のチケットを予約して観に行って下さい、なんてことではありません。

(実際とっても人気演目なので良席は一瞬で売り切れたとのこと・・・)

まず人形浄瑠璃・文楽で上演される古典を知ってもらう、それだけで十分でございます。

その中でもし、もしたった一人でも興味を持ってくれて、テレビや雑誌でもし文楽の話題を見つけた時に、今までは流し見していたものを「お、ちょっと見てみようか」と思って下されば、これほど嬉しいことはございません。

 

なお、人形浄瑠璃・文楽を本当に観てみたい!と思って下さった方は、東京の国立劇場・大阪の国立文楽劇場で年間を通して上演されておりますので、調べてみて下さい。回数は多くはないですが、地方公演もございます。

(こひらに個人的にDM下さってもかまいません・・・夫婦で嬉々としてご協力いたします)

 

ちなみにボイスドラマにしたらおもしろそう・・・と思っている古典浄瑠璃は他にもいくつかあるので、またいつか企画できたらいいなと思います。

それでは、次の作品でお会いしましょう。

 

ご協力いただいた全ての皆さま、ご視聴いただいた全ての皆さまへの感謝を込めて。

本当にありがとうございました。